2022.06.18
今日はNYタイムズに掲載された記事についてお話します。
2019年初め、NYタイムズのレイチェルさんという記者の方が通訳を連れて当店コツメイトを訪ねてきました。
「カワウソの保護活動について記事にしたい」とのことだったので喜んで取材を受けることにしました。
先日お話した内容と同様のカワウソに出会った経緯や、日本へ正規輸入するために必要なインドネシアからの輸出の書類、ワシントン条約(以下、CITESという)の書類、日本での輸入公表に必要な書類などもお見せしながら詳しく説明しました。
難しい話も熱心に聞いてくれていましたが、彼女が1番興味を示したのは『私(長安)はコツメイトから給料をもらっていない』というところでした。
「金儲けの為に始めたんでしょ?」と聞かれたので『カワウソの密輸や絶滅を防ぎたいから』と伝えると、「信じられない!」と驚かれました。
保護活動はボランティアでされている方が多いので意外な反応でした。
『インドネシアの保護施設の場所を教えるから是非施設も見てきてほしい』と伝えると、「私は行かない、知り合いが行く」とのことでした。
後日、1人の男性がインドネシアの保護施設に来ました。
立ち入り禁止区域(案内看板有り)に無断で入り、突然、「カワウソを売ってほしい」と訪ねてきたそうです。
当時、施設は掃除の時間で現地スタッフは相手にしなかったそうですが、「何枚か写真を撮って帰って行った」と報告を受けました。
その男性以外には取材の申し込みが来ることも施設に尋ねてくる人もいなかったので、彼がレイチェルさんの知り合いの方だったのでしょう。
(記事ではインドネシアのスコーピオンという団体のGEA氏)
十分な巣箱もない!野生で捕獲されたようだ!などとコメントされていました…政府の許可を得ているとはいえ、個人のやっている施設なので立派なものではないかもしれません。
当時の施設を撮影した動画がありましたのでYouTubeに載せておきます。
GEA氏は16頭の成体を確認したという話ですが、施設にはもっと多くのカワウソがいましたから何を見たのでしょうか。
また、レイチェルさんには、『インドネシア政府にも取材をし、書類を見せてもらって欲しい』と話すと頑なに断られました。
レイチェルさんは取材年時(2019年)の8月に開催されるCITES第18回締約国会議でコツメカワウソも附属書Ⅰ類となるだろう(2019年11月より発効、Ⅰ類になりました)ということもあり、5月の『世界カワウソの日』までに今回の記事をあげたいと言っていました。
取材後も掲載するまではメールでのやり取りもスムーズに行えていました。
しかし、いざNYタイムズに掲載された記事の内容を見ると、別のカワウソカフェの写真も一緒に載っていたりと、事実と異なる部分が多く、訂正を求めて通訳の方を通して連絡をしてみるもレイチェルさん本人とは連絡が取れなくなってしまいました。
後で調べると、レイチェルさんはNYタイムズの記者ではなく、長年密猟問題を取り上げているフリーのジャーナリストだとWikipediaに載っていました。
今となっては、<コツメイトは悪である>という結論ありきの取材だったのかもしれません。
上手く利用されたんやろなーと…
それまでも、テレビの取材などで、『〇〇と言ってください』と思ってもいないセリフを用意されることや、会話の一部を切り取られてしまうことがありましたが、NYタイムズという世界でも有名な新聞社でそのようなことが起きるとは思いもしませんでした。
前回も書きましたが、インドネシアではジョコ大統領に代わってから、賄賂を要求する役人は逮捕・更迭されるようになっています。
不正は出来ません。
カワウソに限らず密輸大国と言われる日本で始めた保護活動を、有名な新聞社に取り上げてもらい、少しでも多くの人に今のコツメカワウソの現状やこの活動を知ってもらえるなら、と受けた取材でしたが、残念な結果となってしまいました。
この話は、掲載されたNYタイムズの記事と取材時の相違に憤りもあり、私の個人的主観が多くなってしまいましたが、今まで背景を話す機会もなかったので今回お伝えできてよかったと思っています。
コツメカワウソの保護活動を始める時から簡単には越えられない分厚い壁がある!と分かってはいたつもりでしたが、その壁は想像以上に大きく、未だにいくつも立ちはだかっています。
私の馬鹿さ加減がわかってしまうお話でしたが、最後まで読んでいただきましてありがとうございます。
次回は日本のコツメカワウソの現状について書こうと思います。